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有望デザイナーの登竜門「イッツ」存続の危機

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有望新人の世界への登竜門として知られるファッションコンテスト「イッツ」。その第8回の審査会が北イタリアのトリエステで、7月10、11日に開かれた。数ある新人コンテストの中でも特に独創的な出品が多いことで注目されてきたが、経済危機を背景に協賛企業からの援助が困難になったことで、来年以後の存続が危ぶまれている。

 トリエステは、中欧スロベニアとの国境に臨む人口20万人ほどの古い港町。コンテストの発起人で運営も行うバーバラ・フランチンさんの本拠地である。

 今年は80カ国、1392人の応募の中から、服と小物、写真の各部門で計50人が最終審査会に参加した。

 服の最優秀賞は、伝統的なメンズスーツを解体したり寝袋をつけたりと様々に変容させながらも端正に仕上げた韓国出身のメイソン・ジャンが受賞した。「服装や生活スタイルが均質化している韓国の若者を鼓舞したくて」とジャンは語った。賞金2万ユーロ(約270万円)。

 賞金5万ユーロのほかに協賛のディーゼル社で研修ができるディーゼル賞には、ドイツのアリス・ナクフスが選ばれた。規範でがんじがらめの現代社会を制服や紳士服にたとえ、そこに明るい色を加えたメンズスタイルで自由な方向性を表したという。

 今回の出品では、メンズが半数近くを占めた。デザインが飽和状態のレディースより、メンズの方が可能性に富んでいるということらしい。また、特別賞の作品に見るように、後加工などを施した凝った素材や造形的なシェイプなど、技術的にもレベルの高い作品が目立った。

 小物部門で1万ユーロが贈られるYKKアクセサリー賞は、アントワープに留学後、日本に帰国した中里唯馬(ゆいま)に決まった。折り紙をヒントにファスナーで開閉すると平らになるブーツを発表。「コンテストで貴重な人脈ができた。ラトビア共和国でのショーに招待された」と中里。

 イッツは、International Talent Supportの略。世界中のファッション系の学校から出品を募り、受賞後の支援にも力を入れてきた。開催中に審査員のデザイナーやジャーナリスト、有名ブランドのスカウトらと自由に交流できる場も設けている。パリや東京コレクションで注目されるキャシー・ピルや坂部三樹郎らも輩出した。

 しかし、昨今の不況から支援企業の協賛金不足となり、規模縮小やウェブサイトなどでの開催を検討中という。運営責任者フランチンさんは「デザイナーとして成功するには7、8年の下積みが必要。受賞者を長く支援するイッツのシステムは貴重だったのに」と唇をかむ。

 メーンスポンサーであるディーゼルのレンツォ・ロッソ社長は「コンテストもより現代的で画期的な方法に変えていく時期かもしれない」と語る。会場を訪れたデザイナーのウォルター・ヴァン・ベイレンドンクも「いい企画だった。細々とでも続ければ道が開けるのでは」。

 若手デザイナーへの支援は、いま世界的に困難な状況を迎えている。日本の様々な企画も資金調達に四苦八苦しているという。とはいえ、不況下こそ新しい創造性を求める声は強い。人気デザイナーの多くが高齢化する中で、どうにかして若手を育てていく必要があるからだ。(編集委員・高橋牧子)

text : asahi.com



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